1. HOME
  2. ブログ
  3. 人事制度
  4. 正しい給与査定が社員の離職も防ぐ。正しい評価構築と運用ルールとは

BLOG

経営改善ブログ

人事制度

正しい給与査定が社員の離職も防ぐ。正しい評価構築と運用ルールとは

給与査定時に正しい評価を行うには、評価者ごとに異なる評価を下さないよう、共通の評価基準を設けることが大切です。しかし、人材の評価は誰にとってもかんたんなことではなく、ひとたび社員が不当な評価と判断した場合、その社員は離職を検討するでしょう。

優秀な人材を確保するのは年々難しくなってきていますし、社員が自社から離れてしまうのは、当該社員の実力にかかわらず企業の負担となります。

この記事では、社員の離職を防ぐという観点から、正しい給与査定のポイントや、給与査定の運用ルール構築の基本について解説します。

給与査定で離職を検討する社員のホンネ

給与査定の結果、離職を検討する社員には、いくつかの傾向が見られます。
以下、給与査定後に離職を検討する社員のホンネをご紹介します。

努力に見合った給与が得られない

複数の人事調査の結果を見る限り、給与査定で離職を検討する社員の多くは、努力に見合った給与が得られないことに不満を抱いています。

実際のところ、一概に評価者が悪いとも言い切れない部分はありますが、上司等の評価に納得がいっていない社員は、どの企業にも一定数存在しているものと推察されます。

多くの日本企業では、残業している社員・ベテラン社員が高給取りになるなど、自社に長く貢献している人材を評価する仕組みが長く続いていました。

しかし、企業が実力主義に移行したことで、これまでの努力が今まで通り評価されなくなると、やはりその点に不満を抱く社員がいてもおかしくありません。

他の視点から見ると、例えば企業側がずっと基本給を上げずに社員を雇用しているケースも考えられます。社内で相対的に見る限り、優秀な社員の給与が高かったとしても、同業他社の水準に届いていなければ転職を考えるのは当然でしょう。

実際の社員の実力・成果物の程度はともかく、ひとたび社員が企業に対して「努力に見合った給与をもらっていない」と感じてしまったら、そのネガティブな意識は他の社員にも伝播していきます。

企業としては、毅然とした態度で査定ができるよう、客観的に人材を評価できる仕組みを構築する必要があります。

査定の基準が公正でない

企業によっては、実力を評価するものさしが、経営者のさじ加減で決まってしまう場合もあります。何を頑張ったら評価されるのか、基準があいまいなままだと、給与査定の結果を聞いて社員が不安・不満を抱くのは当然と言えます。

また、社内・部署等で共通の基準を設けておかないと、評価対象者だけでなく、評価者のスキルが向上しているかどうかも分からなくなります。

査定基準がない中で給与査定を行うのは、評価者によってもストレスになりますし、部下等に対して適切なフィードバックを行うのも難しいでしょう。

結果的に、人事評価が事実上の印象評価になってしまうことで、社員の心が次第に企業から離れてしまうことが想定されます。評価する側・される側が、どういう経緯で評価に至ったのかが分かる仕組みがあれば、給与査定に対する不満も少なくなるはずです。

自社の評価が顧客の方を向いていない

すべての企業にとって、利益を出し続けることが企業存続の条件となります。

そのため、どうしても利益を重視した評価になってしまうのは致し方ありませんが、顧客や社会のために行う行動がまったく評価されていない場合、その点が社員に不満を抱かせてしまうおそれがあります。

例えば、店舗や公共施設等で休日向けイベントを行い売上が増えた場合、営業担当者だけでなく設営・運営に携わったスタッフも評価されてしかるべきです。

しかし、実際に成績が評価に反映されるのが営業スタッフだけだったとしたら、当然ながら設営・運営スタッフの不満は解消されません。

自社の利益がどこから出ているのかを正しく把握できていれば、誰をどう評価すべきかが明確になります。少なくとも、顧客や社会の方を向いていない評価は、決して正当なものとは言えないでしょう。

離職を検討するその他の理由

その他、給与査定を理由に社員が離職を検討するケースとしては、以下のようなものが考えられます。

  • 評価制度の仕組みがよく分からない(分かりにくい)
  • 評価者(上司等)が信頼できない
  • 年功序列が当然の雰囲気なので、社員が声を上げることができない
  • 一度低評価を受けると、同様の評価を取り戻すのが難しい

上記のような理由があると、社員が自社の評価に対して不信感を抱いてしまうのは、当然のことと言えるでしょう。企業としては、社員が平等な立場で前向きにチャレンジできる仕組みを、どうやって給与査定に反映させるかが重要になります。

社員が納得する正しい評価基準を作るポイント

給与査定時、企業の評価基準に不備があると、社員の納得感は低くなってしまいます。社員が納得できる、正しい評価基準を作るためには、以下のポイントを意識して仕組みを構築することが大切です。

絶対評価であること

学校の現場でもそうですが、日本ではこれまでの相対評価から、絶対評価へと移行する動きが見られます。

絶対評価へと移行した背景には、少子化や評価への信頼性向上などがありましたが、企業経営でも「労働人口減少」・「売り手市場」といった傾向が見られるため、絶対評価が受け入れられやすい状況と言えます。

絶対評価では、基本的に「設定された目標をどの程度達成できたのか」を基準に処遇を決定します。そのため、企業と社員の間で約束した目標が達成されていれば、高評価が得られます。

社員の納得感も高いため、給与額の調整が面倒な点を除けば、企業の給与査定において絶対評価を採用するメリットは大きいものと推察されます。

相対評価はなぜ問題なのか?

経営者目線で見ると、相対評価には「給与総額の枠内で、一定の順位にもとづいて社員に給与を分配しやすい」というメリットがあります。

しかし、メリットに比べると、以下の通りデメリットは多い傾向にあります。

  • 社員の実績が経営陣の基準に達していなくても、高評価者が発生する
  • 厳しい評価基準を設けるのが難しくなる
  • 全体的にアンフェアな評価になる

また、相対評価は、年度によっては評価に大きな差が生じる可能性があります。

「去年より今年は頑張ったはずなのに、給与に全然反映されていない」という事態が起こりやすいため、労働者側が職場を自由に選びやすい売り手市場では、相対評価のデメリットが際立つ結果になるでしょう。

査定のスピード感を重視すること

給与査定を行うスパンは、企業により異なりますが、従業員が勤務した1年間の実績で評価するケースが多く見られます。しかし、1年という期間は、ビジネスのスピードが年々増している状況において、社員の働きぶりを適切に評価するには長すぎます。

最低でも、中間面談をはさんだ半期ごとの査定を行わなければ、タイムリーな評価は難しいでしょう。より短く、4半期ごとの査定を行ったり、可能であればノーレイティングへと移行したりするのも効果的です。

社員が一番うれしいのは、企業や上司が「自分をきちんと気にかけてくれている」ことです。査定の時間は、単純に企業が社員を評価するだけでなく、コミュニケーションをとる時間でもあるのです。

一つの評価方法にこだわらないこと

社員の仕事ぶりを評価する場合、指標は必ずしも一つとは限りません。
一つの評価方法だけで、社員の強みや改善点は見えないものですし、評価者の見方次第で評価も分かれるのが普通です。

また、自社のステージによって、適切な評価方法も変わってきます。
評価者が増えれば、より効率的な評価方法を採用する必要があります。

MBO(目標管理制度)だけでなく、OKRやバリュー評価など、新しい評価方法を採用する企業も増えてきています。離職率の低下・社員のモチベーションアップを目指すのであれば、これまでの評価方法にこだわらず、新しい試みを始めることをおすすめします。

給与査定の運用ルール構築の基本

給与査定時は、給与を以下の3つの単位に分けて運用するのが基本です。

  • 本給
  • 仕事給
  • 調整給

以下、それぞれの運用方法について解説します。

本給は「微増」が原則

本給とは、社員に支払われる給与のうち、大きく金額が変動しない部分のことです。
賃金テーブルにおけるグレードを例にとると、グレードごとに定められている基本的な給与額が該当します。

すべての社員のベースとなる給与ですから、昇給時期は決算期を選ぶのが一般的です。
本給は、毎年一定額を加算する形で運用しますが、企業が「利益・売上目標を達成する」ことを、本給の昇給の条件とします。

万一、十分な利益・売上が確保できなかった場合は、昇給額は減額することも想定しておかなければなりません。その場合、社員に昇給額が少ない(あるいは昇給しない)理由を説明する必要があるでしょう。

仕事給はモチベーションの維持を意識

仕事給とは、社員に支払われる給与のうち、社員の仕事ぶりに応じて金額が変動する部分のことです。あらかじめ、グレードごとの昇給金額を決めておき、成果を出せている場合は多く支払い、期待していた実績でなければ少なく支払います。

仕事給を増減する際は、仮に4半期での査定(それよりも短い期間も含む)を行っているとしても、半年ごとの増減とするのが一般的です。

具体的には、決算期の翌月と、半期終了月の翌月がよいでしょう。

仕事給を運用するポイントとしては、モチベーションの維持を念頭に置くことが重要です。仮に、1年ごとに査定の結果を給与に反映させた場合、給与が上がった社員はともかく、下がった社員のモチベーションは1年間下がったままかもしれません。

しかし、半年ごとに反映させる場合は、もし前半で評価が低くても、後半で盛り返そうとする意欲を保ちやすくなります。仕事給は、社員のやる気に強く影響するため、注意して運用しましょう。

調整給はイレギュラーケース

調整給とは、現在の査定基準にのっとって給与を計算した際、支給額が少なくなってしまった場合に発生する支払い分です。

原則として、新しい人事評価制度を運用して間もない時期など、新制度で支給額が減ってしまった社員に対して、一定期間・補助的に給与を支払う目的などで利用するものです。

他には、中途採用者の給与支払いにつき、初回の査定まで前職同様の給与を支払うために調整給を用いる場合もあります。よって、調整給は基本的にいつまでも発生するものではなく、やがては0にしなければならない部分です。

本給・仕事給の運用が軌道に乗れば、すべての社員の調整給は少しずつなくなっていくはずです。調整給は、あくまでもイレギュラーケースに対処するためのものと考えて運用しましょう。

おわりに

給与査定は、社員の納得感を無視して進めると、離職の原因になります。
公正な評価ができない状況が続けば、社員のモチベーションも下がってしまいます。

企業は、社員一人ひとりと向き合う意識を持ち、評価の質を高める必要があります。査定に関しては、基本的な運用ルールを守りつつ、イレギュラーケースが発生した場合はできるだけ早く解消することが大切です。

関連記事