人事制度改革の事例【人事制度が整っていない会社に起こった問題とその解決策】
こんにちは、ファーストステップ株式会社・コンサルタントです。
突然ですが、自社の人事制度に自信がありますか?
実は、中小企業の多くが人事制度に問題を抱えています。
制度自体がまったくないわけではないけど、そろそろちゃんとした方がいいのではないか…?とか、感覚的に、急ぎで作ってしまったので実態に合っていない…など、人事制度の見直しをしたい方の参考になるよう実際に起きた事例を紹介していきたいと思います。
人事制度が整っていない会社に起こったこと
事例①:給料泥棒かもしれない「彼」
社内のNo.2の人の働きに不満を持っていた社長は、なんとかして彼を辞めさせられないか?と悩んでいました。
私にも「なんとか彼が転職するよう言ってくれないか?」との依頼があったため、様々な方法でアプローチを試みたのですが、動く様子はありませんでした。
ついに、しびれを切らした社長が給料カットの打診をし、大モメに…。
そんな時、本当に悪いのは誰なのでしょうか?
給料のわりに働かない彼か、給料を払いすぎてしまった社長か。
事例②:やり手なのに薄給なのでイライラしている「彼」
数々の重要顧客を持ちながら、営業部のたくさんの部下を率い、さらに自らもプレイングマネージャーとして新規開拓も行う、営業部の中ではスーパーマンのような方がいました。
レスポンスが良く、とにかく仕事からでクライアントからの評判も上々。会社の売上を左右する男と言っても過言ではない。なのに、貰っている給料はそこそこ…
本来なら家族を養っていくためにこれからもっと頑張っていくタイミングのはずなのに、いくら成果を上げても給料に反映されないことに憤り、ストレスからいつしか部下にパワハラを働くように。
そんな時、本当に悪いのは誰なのでしょうか?
給料を上げない社長か、パワハラをする彼か。
どちらも元凶は同じ
ウチは中小企業だから…と言い訳をしていませんか?
- 社長の一存で社員の給料を決めて何が悪い?
- 自分について来たい人間だけが付いてくればいい…
- 社長のやり方に不満があるなら辞めるのが筋だろうて
本当にそうでしょうか?
そもそも、給料ってどうやって決めていますか?
給料や昇格の基準は明確化されていますか?公平性はありますか?
これら2つの事例は、実は共通した元凶があります。それは、人事制度のあり方そのものです。
- 給料泥棒がいる会社
- 成果を上げているのに貰いが少ない会社
どちらも人事制度の改革をすることが急務だと言えます。
なぜか。それは、明確化され公平性が担保された人事制度でなければ、社員の不満が溜まるからです。不満と言うのが爆発した時、企業はたちまち危機を迎えます。
もし不満が爆発したら…
人事制度に関する社員の不満をそのままにしていませんか?社員の不満が爆発すると、このようなことが起きます。
有能な人が辞める
会社に貢献しているのにあまり評価をしてもらえない…という思いを抱くと、もっと自分を大切にし、正当に評価してくれる環境に身を置こうとします。
つまり、有能な人が辞めてしまうということです。
そして、あの人が辞めるなら私も…と、芋づる式に有能な人が抜けてしまい、気が付いた時には、実力はあまりないけど古参社員だからとか、縁故があるからといった理由で給料が高くて働きの少ない、コスパの悪い人材ばかりが会社に残ってしまいます。
有能な社員の退職はたちまち人手不足に陥り、新しい人を探すにも採用コストがかかります。また、社員の質が低下するので採算性も悪くなります。
独立する、競合になる
できる人というのは、ライバル企業にとっても欲しい人材です。
不満を募らせた社員は御社の情報、取引先とのパイプ、経験…すべてを持ってライバル企業に転職したり、独立することも考えられます。
特に営業部の部長や役員といった重要顧客との関係構築に成功している人が、突然会社を辞めたと思ったら、取引先と出来の良い部下をまとめて引っ張っていき、独立した…という謀反は結構あるあるなので注意しましょう。
良い人が抜ければ会社は弱体化しますし、下手をすれば顧客まで取られることも。人事に関する社員の不満を放っておくことは、会社にとって大きなリスクをはらんでいると言えます。
ではどんな人事制度にしたらよいのか?
人事制度を構築するために、一番大切なのは「制度ありき」にならないようにすることです。
具体的に言うと、ひとりひとりが会社の採算と貢献度に合った評価を受けられるようにする必要があります。
まず、一人ひとりの時間当たり収益を計算して、貢献度が高い人の給料が高くなるようにします。
このためには、会社の採算を社員に明かすガラス張りの経営にすることが求められます。不公平感もなくなり、会社のために頑張ることと、自分の評価や給料を上げるために頑張ることのベクトルが同じになるので、社員が自分の力を発揮しようと前向きに働く動機付けにもなります。
でも、「採算と人事を結びつけるためには、社員に会社の儲けや損をすべて見せなければならないの…?」と不安になられた方もいるのではないでしょうか?
人事制度改革のためには、実は経営体質をも変える必要があるのです。
それは、会社にとっても社員にとっても良いこと尽くし。孤軍奮闘していた社長様も、「全員経営」になることで肩の荷が下り採算も良くなりますので、ガラス張りの経営を怖がる必要はありません。
社員に経営状況を秘密にするデメリット
反対に、このまま社員に経営状況を見せずにいると、どんなデメリットが生じているかを見ていきましょう。
社員は全然自分の気持ちを分かってくれない…そう思っている社長様も多いようです。
ですが、社員も社長は自分の苦労を何も分かってくれない…と思っています。
社長ばかり高い給料を貰っていてずるい。
とか、
ウチの社長はケチだ。もっと給料を上げてほしい。
などと、社員は結構勝手な事を思っていたりするものです。
なぜそういったすれ違いが生じるかと言うと、経営状況を見せていないからです。
売上をあげて、利益を出し、そこから給料を払う…という流れの認識が甘く「ウチの会社は当然利益は出ているもの」と思っている社員が多すぎるのです。
採算を元にした人事制度にすることで、社員にも経営に対する意識を芽生えさせることができます。
人事制度を変えた成功例
単純な年功序列になっていたり、社長の一存で人事を決めていたり、今の会社の実体と合っていなかったり、何年も前になんとなくで決めた人事制度を使っていたり、実質的にはその場で社長が決めている…という状態から採算を反映した人事制度にすることで、先の2つの事例はどう変わったのでしょうか?
事例①:給料泥棒→責任ある社長の右腕に
社長からすると給料泥棒だと思っていた彼、実は採算で見るとなかなかよく仕事をしていました。
残業している人が、必ずしも仕事が出来る人ではないのと同じように、彼は効率よく仕事をしていただけでサボっていたのではありませんでした。
社長も彼のことを「若造」だと思い、サボっていると思っていた。彼も社長のことを「自分のことを全然信頼してくれない」と思っていた…。
かなり関係がこじれた状態から人事制度改革を始めましたが、経営状況をシェアし、採算と評価を一体化させたことでお互いの誤解が解け、彼は社長の右腕という新たな仕事を手に入れ、今まで以上に頑張るようになりました。
事例②:パワハラ上司から有能な役員へ
働きのわりに評価を得られていないことに腹を立てていた彼は、人事制度改革の結果すっかり角が取れ、頼れる上司へと様変わりしました。
部門別採算性を敷き、貢献度を社内で見える化したことにより、彼の存在を社長も他の社員も皆が大切にするように。
そして、彼は役員へと昇格しパワハラも収まりました。
人事制度改革を成功させるために
まずは、自社の人事制度が会社の採算と整合性が取れているかをチェックしましょう。
また、給料が安すぎると不満に思っている人はいないか?不公平だと思っている人はいないか?社員の様子をよく見てみましょう。
採算に基づいた透明性があり、公平な人事制度を作ることは会社の安定性を保ち、社員を働きやすくすることに繋がるので、ぜひ取り組んでみてください。
人事制度改革についてなにか気になることがあれば、お気軽にご連絡ください。