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人事制度

誰が何をしているのか明確にする。人事考課制度構築のポイントは?

人事と聞くと、密室で・限られた人間の意向で決まるイメージが強いかもしれません。しかし、これからの人事は、社員の誰が何をしているのかについて、より多くの情報を明確にすることがテーマになるでしょう。

自社を取り巻く状況が変化する中では、人事考課制度もまた変化を求められます。この記事では、新たな人事考課制度構築にあたり、押さえておきたいポイントについて解説します。

歴史から人事考課制度を読み解く

人事考課制度にも時流があり、日本の歴史を紐解いていくと、人事制度にも各時代にフィットしたものが採用されていることが分かります。以下、戦後の日本の歴史から、各時代にどんな人事考課制度が採用されてきたのか見ていきましょう。

日本が成長を続けていた時代の人事考課制度

戦後から高度経済成長期において、従業員は純粋に労働力として重宝されました。人がいれば利益につながるため、人事の仕事と言えば「労務」の意味合いが強かった時代とも言えます。

日本企業の特徴としてよく語られる「年功序列」が生まれたのもこの時期で、同じ会社で長年勤めていればポストを得られ、昇進とともに報酬も増えることが約束されていた時代でした。

よって、人事考課制度は良くも悪くも大きく変容することなく、多くの企業で似たような仕組みが運用されていたものと考えてよいでしょう。

バブル崩壊から2000年頃の人事考課制度

日本経済は、バブル崩壊によって大きな節目を迎えます。
成長の度合いが小さくなったり、停滞が長く続いたりした企業も多く、その時流を受けて人事考課制度の運用にも変化が訪れました。

特に、社員の能力や成果をもとに賃金を変動させたり、年俸制を導入したりする企業が増え、社員の実力が反映されるタイプの人事考課制度を採用する企業が増えました。

また、成果主義を社内に浸透させるべく、目標管理などのマネジメント法も運用が進められていきます。

海外に目を向ける2000年代の人事考課制度

実力本位の制度の導入が進む中で、個人の成績が重視される傾向の反動から、組織としての成長が進んでいない現状が浮き彫りになる企業が増えてきました。ここから、これまでの人事考課制度を見直す動きが強まり、多種多様な制度の導入が進められていきます。

この時期は、企業内で高い成績をマークしている人材の行動特性に注目するコンピテンシー評価、複数の関係者が1人の従業員を評価する360度評価、従業員の仕事ぶりをレベル分けして等級を定める職能資格制度など、自社のニーズに合致する制度が注目され始めます。

海外に事業所を進出させたり、外国籍の人材を雇ったりするケースを想定する中で、ダイバーシティなど新しい概念も認知されていきました。

個人にフォーカスする最近の人事考課制度

新しい人事考課制度の導入は、各社の事情に即したものが採用されていく傾向にあるため、多様化が進んでいます。最近では特に、個人にフォーカスするタイプの人事考課制度が導入されています。

新型コロナ禍という状況もあって、リモートワークが本格的に採用される企業も多い中、バリュー評価やOKR(重要業績評価指数)などの新しい評価制度を採用するケースも増えてきました。

今後も、新しい人事考課制度に注目が集まるものと考えられるため、経営陣や人事担当者は十分に検討した上で新制度の運用に向けて動きたいところです。

人事戦略から人事考課制度を構築する

事業収益性の改善・売上向上

実際に人事考課制度を構築しようとする場合、制度構築の目的を明確にすべきです。
以下、人事戦略をベースに人事考課制度を構築するケースを考えてみましょう。

人事戦略とは何か

人事戦略とは、主に人事部門の業務につき、効率よく業務を進めていくための指針になるものです。具体的には、企業の採用活動・人材の育成や配置といった、人事全般の業務や動きについて改善を試み、組織全体の生産性を高めるための戦略が該当します。

一口に言ってしまえばそれまでですが、人事戦略を検討する方向性はいくつか存在しており、例えば以下のようなものがあげられます。

  • 自社で欲しい人材をどのように供給するのか(採用や配置、育成など)
  • 人事制度を構築する上で基盤とする考えは何か(評価、報酬、等級など)
  • そもそも人事部門にはどんな人材が必要なのか(人事として必要な能力、適性など)

慢性的な人材不足や、労働人口の減少が深刻な日本企業において、人事戦略は企業の将来を左右する重要な要素となっています。

将来の経営戦略にも関わってくる問題のため、変化する時代の流れをとらえつつ安定して人材を登用したいのであれば、人事戦略の策定は避けて通れないものと考えておくべきです。

人事戦略を策定するにあたり注目すべきポイント

具体的に人事戦略を作成する際は、主に3つの点に着目して戦略を立てる必要があります。以下、それぞれのポイントについて見ていきましょう。

経営戦略をベースに考えていく

企業がその経営目的を達成するために、必要な考え方を計画にまとめたものが、経営戦略です。
「自社のビジョンを実現するための方策」とイメージすると、分かりやすいかもしれません。

経営戦略に沿って考えた際、人事戦略の中で重要なことは、戦略上優秀と考えられる人材の確保と定着です。また、すでに自社で働いてくれている優秀な人材が、外部に流出することを防ぐことも戦略の中に組み込んでおく必要があります。

もちろん、その根底には自社の社訓・社是・経営理念などがあるべきです。
どんな人物を・どんな目的で採用するのか、戦略として明記しておくことが大切です。

時代の変化を可能な限り考慮する

難しい問題ではありますが、戦略である以上、人事戦略の策定においては「時代の変化」を可能な限り考慮しましょう。社会情勢や労働市場の変化を想定しつつ、新しいニーズの仕事が発生した場合に備えるなど、フレキシブルな対応ができるよう中身を精査するのが理想です。

離職理由一つとっても、過去の従業員と最近の従業員では理由が違います。
「仕事が自分に合わない」と感じるだけで、早期に職場を離れてしまう人材も、一昔前に比べれば多くなってきています。

多彩な人材を評価するには、タレントマネジメントシステムを運用して経過を観察するなど、今の自社の状況に合った仕組みを取り入れると効率的です。ただ、いきなり導入は難しいでしょうから、どういうプロセスを経て導入するのかについて計画を策定することが必要になります。

問題点を発見して改善する視点を取り入れる

人事戦略にのっとった施策を実施していても、企業は嗜好も信条も異なる人材の集まりですから、時には何らかの形で問題が生じることが予想されます。

この点において、問題点をどう見つけていくのか、それをどう改善させていくのかという視点も、戦略に盛り込んでおきたいところです。

最終的に「どのような状態になったら成功と言えるのか」を明確にしておけば、施策の効果を検証しやすくなります。現時点での課題は脇に置かず、戦略の中に組み込んでいきましょう。

自社にフィットする人事考課制度を模索する

人事戦略がまとまったら、そこから自社にフィットする人事考課制度は何か、過去の例の中から模索します。

企業が従業員に対して平等かつ適切な評価を下すことは、従業員の企業に対する信頼度を醸成することにつながるため、もっとも人事戦略の方針にふさわしいものを採用しましょう。

一つの人事考課制度にすべての社員を当てはめる方法もありますが、働き方が異なる従業員に対する評価は、別々の制度で評価することもできます。

また、完全在宅・リモートワークだとキャリアアップが難しいといった状況があるなら、事前に該当者に伝えておくなどの配慮も必要です。

企業と従業員が、お互いに納得できる人事考課制度を採用することが、将来にわたり持続的な関係を築くことにつながります。自社の立場で、できるだけ誠実に運用できそうな制度を採用しましょう。

人事考課制度の中で、誰が何をしているのか明確にするために知るべきこと

さまざまな人事考課制度のモデルが存在する中で、自社が何を・どこまで取り入れるのかは、多くの人事にとって重要な課題です。

ただ、導入時に共通している問題は、戦略に対して「誰が何をしているのか明確にする」ことですから、以下のポイントに絞って制度を構築するとよいでしょう。

能力が分かるかどうか

企業側が定めた条件と比較して、もっとも従業員の行動を評価しやすいのは、能力にフォーカスすることです。各等級の中で、企業が求める標準的な能力が備わっているかどうか判断する基準があると、人事や役職者が効率的に評価のプロセスを踏めます。

成績が分かるかどうか

営業成績・販売実績のように、従業員が行動した結果を追える部署であれば、成績にフォーカスする方法もあります。従業員に求められる仕事内容が一人ひとり違う場合は、ミッションを上席者があらかじめ定め、それに対して結果を出したかどうかで判断することもできます。

逆に、一律で同じ内容の仕事を任せている場合は、評価基準が均一でなければなりません。その点についてメリハリをつけられるなら、成績を基準に考課制度を構築するメリットは十分にあります。

模範的な行動をとっているかどうか

従業員が会社に貢献する部分は、必ずしも自分の仕事に関係した分野だけとは限りません。個人で取り組んでいたボランティア活動が社会に評価されたり、社内活動で率先的に役割をこなしたりした人材を評価したいと思うのは、企業として当然のことです。

やや抽象的ではありますが、規律性や責任感などを評価する情意考課も、社員を評価するにあたって大切な基準の一つに数えられます。模範的な行動をした人材を評価できる余地も、可能な限り人事考課制度に加えておきたいところです。

おわりに

人間が人間を評価することは、決してかんたんなことではありませんが、企業が従業員を雇う以上は避けて通れない部分です。

人事戦略に基づいた採用を実現するためにも、今回お伝えしたポイントを押さえて制度を構築することが大切です。

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