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人事制度や階級の見直し時期。適切なタイミングはいつ?

人事制度や階級は、一度決定すると見直しのタイミングを把握するのが難しいかもしれません。中途半端な時期に行うと、本来の業務に支障をきたすおそれがありますし、社員の士気を下げてしまうことも考慮しなければならないからです。

しかし、企業が直面している状況に応じて、柔軟に制度等を見直していかなければ、企業・社員の成長を止めてしまうことでしょう。

この記事では、人事制度・階級を見直す際に適切とされるタイミングや、実際に見直しをかける際の注意点について解説します。

人事制度・階級の見直しを行うタイミング

自社の人事制度・階級の見直しを行う際は、一般的に見直しが妥当と思われる時期を選ぶほか、企業としての節目を選んで行うケースが多く見られます。

以下、具体的なタイミングをいくつかご紹介します。

法改正

分かりやすい見直しのタイミングとしては、労働法等の改正が行われた時期があげられます。働き方改革関連法案が施行され、残業時間に上限が課せられたことから、多くの企業は各種制度の見直しをかける必要に迫られました。

ただ、考え方によっては、こういった法改正は自社の現状を見直すチャンスになります。

経営者や人事が「法改正にともない人事制度を改正します」とアナウンスしても、明確な根拠があるわけですから、大っぴらに不満を訴える社員は少ないはずです。

組織変更

組織としてより効率よく機能するために、企業は一定のスパンで組織変更を行うことがあります。

市場の将来の変化を見据えて吸収合併を行ったり、事業の一部を切り離して他社に承継させたりした場合、既存の制度をそのまま運用すると都合が悪い場合があります。

こういったタイミングで、自社の制度を一から見直したとしても、違和感はないはずです。目立った変化がない場合であっても、例えば社名を変更するような機会があれば、そのタイミングで制度の見直しをかけても違和感はないでしょう。

資金的なゆとりがある時期

人事制度や階級の見直しは、表現を変えれば「社員に対する給料の支払いに関するルール」を変えることと言えます。当然ながら、一部の反対意見を持つ社員とは合意する必要がありますし、金銭的な補償も想定しておかなければなりません。

よって、人事制度・階級を見直すのであれば、企業としてはなるべく資金的なゆとりがある時期に行った方が賢明です。事前に金銭的な負担を想定して準備しておけば、スムーズに見直しをかけられます。

その他のタイミング

先にあげた時期以外でも、社員が制度見直しを妥当だと感じる・制度見直しをかける理由が理解できる時期があれば、そのタイミングで動いてしまうのも一手です。

比較的分かりやすい例としては、創業15周年のようなキリのよい時期や、従業員数が50人に達した時期などがあげられます。

世代交代を行った場合も、制度見直しをかけるタイミングとしては自然でしょう。
いずれの場合も、人事制度・階級に限った見直しをかけるのはかえって不自然なので、自社の全体の状況を見通した上で判断・進行することが大切です。

人事制度・階級の見直しにともなうメリット

適切に状況を見極め、人事制度・階級の見直しを成功させた場合、企業はどのような恩恵を受けるのでしょうか。

以下、人事制度・階級の見直しにともなう企業のメリットをご紹介します。

人件費のコントロール

企業の人件費自体は、決算書等でまとまった金額を確認することはできます。
ただ、人件費の具体的な金額にフォーカスして、経営計画を立てるのは難しい部分があります。

企業を立ち上げてから相応の時間が経過したにも関わらず、これまでの人事制度に手を加えないまま経営を続けてきた場合、賃金の決定方法が不規則になっている可能性は否めません。

企業としてのステージに変化が生じている場合、そのステージの変化に応じて制度も見直す必要があります。

例えば、社員のグレードを大ざっぱに分類して、グレードを見れば大まかな賃金支払額がイメージできるようにするだけでも、総額人件費の予測はしやすくなります。

固定費を管理する観点から考えても、人件費のコントロールは重要なファクターですから、極力経営陣が経営判断しやすいような形で制度を整えておきたいところです。

グレードを設計した後は、そこから賃金・給与を設定するための基準(賃金テーブル)を作成することにより、さらに企業全体としての賃金支払額が分かりやすくなります。

部門別会計を導入しているなら、各部門の売上高に対して人件費がいくらかかっているのかも把握しやすくなるでしょう。

労働の生産性を可視化できる

自社における給与支払額の全体像が見えてくると、次のステップとして「誰の」・「どのような要素に」・「いくら」支払っているのかを知りたくなるはずです。

階級の構造があいまいな状況だと、これまでゆるやかに年功序列を進めてきたケースと、役割に対してきちんと賃金を支払っているケースが混在している可能性があります。

等級制度は、大きく分けて以下の3つに分類されます。

  • 職能資格制度(年功序列)
  • 職務等級制度(成果主義)
  • 役割等級制度(ミッショングレード)

企業によっては、これらの仕組みが混じり合うような形で、等級制度が構築されている場合があります。複数の店舗に係長職がいたり、マネジメントに携わっていない課長職がいたりすると、現場が混乱してしまうのは容易に想像できます。

階級のルールを一つに統一することで、個々の社員がどういった成績を出しているのか可視化すると、労働の生産性が分かりやすくなります。

優秀な人材には報いて、十分な成果を出せていない人材にはフォローを入れるなど、きめ細やかな施策を実施できます。

社員のモチベーションアップ

企業の視点だけでなく、社員の視点から見ても、人事制度・階級の見直しにはメリットがあります。階級ごとに昇進・昇給の条件が明確になると、人事評価を通して社員が自分の進むべき方向性を確認できるようになります。

仮に、自分が思っていたような評価につながらなかった社員がいたとしても、その理由が明確であれば、次の評価に向けて何をすればよいのかイメージしやすいでしょう。少なくとも、社長の独断で給与が上下するような体制からは、前向きなマネジメントは生まれません。

もちろん、制度変更によってこれまでの評価を覆された社員がいれば、離職につながるリスクもあります。しかし、モチベーションの低い社員を継続して勤務させるよりは、生産効率や売上は向上するものと考えられます。

社員のモチベーションアップは、売上向上や社風改善につながります。
社内の活気が失われているように感じたら、一度人事制度の見直しに取り掛かることをおすすめします。

人事制度・階級を見直す際の注意点

人事制度・階級の見直しを考えている場合、トップダウンで一気に変更を進めることが最適解とは限りません。以下、見直す前に気を付けたい注意点をいくつかご紹介します。

社員の立場を考えて見直しを進める

企業は、雇用している社員との間に、雇用契約を結んでいます。
契約の中で、労働内容と対価を定めているわけですから、自社の都合で一方的に金額を変更することはできません。

社員に制度の見直しや給与体系の変更を説明したい場合、移行を間近に控えてから一度に説明するのではなく、制度改定を検討している段階からヒアリングをすることが望ましいでしょう。

すべての社員が、制度見直しの恩恵を受けるとは限りませんし、既得権益を失うおそれがある社員の反発は必至と考えるべきです。

もし、自社の都合で社員の給与が減額されることがあれば、場合によっては不利益変更に該当するおそれがあります。労働者の不利益になる労働条件の変更は、労働契約法第9条で禁止されているため、社員一人ひとりに納得してもらってから見直しを進めましょう。

過去の実績との比較検討は慎重に

階級について見直す際、現在の給与の支給額(実績)と比較して判断することがあります。それ自体は問題ない検討方法なのですが、比較検討にあたっての情報量が少ないと、昇給・降給の動きがジグザグになってしまうおそれがあります。

グレードを決めて賃金テーブルを作成するとき、特定の1ヶ月に絞って金額を調整しようとすると、どうしても無理が生じてきます。

年間平均や最高支給額など、複数のデータをあたりながらグレードごとの金額を調整した方が、バランスのとれた制度構築につながるはずです。

また、同業他社の事例をチェックする場合、事例をそのまま自社に当てはめることは避けましょう。基本的に、自社と他社の状況は異なるため、真似るだけでは十分な改善効果は期待できません。

討議の記録と契約書更新の準備も行う

新しい人事制度・階級を検討するにあたり、社長のトップダウンだけですべてを決めることは好ましくありませんから、変更にあたりチームまたはプロジェクトを立ち上げるのが妥当です。

討議を続けていく中で出たアイデアは、ボツになったものも含め、議事録等の形で記録することが大切です。

検討内容やアイデアを残しておくことで、いったん決まったことを見直したり、逆に行き詰まったときの解決策として活用したりするのに役立ちます。文章にするのが面倒な場合は、会議の内容を録音しておき、後で文字起こしする形でもよいでしょう。

制度設計が完了したら、次は就業規則や雇用契約書の更新を進めます。
就業規則・賃金規程を改定した際は、所轄の労働基準監督署に提出が必要になりますから、各種手続きに関しても制度見直しのスケジュールの中に組み込んでおきましょう。

社員への告知は余裕を持って

人事制度・階級の見直しの方向性によっては、一気に収入が減ってしまう社員が出てくる可能性があります。すると、当然ながら一部の社員が生活に困るおそれがあるため、制度変更の告知はゆとりのあるスケジュールを心がけましょう。

具体的には、数ヶ月の予告期間を設ける、制度改定後の減額分を補てんする措置などを行う準備が必要です。

社員を救済する措置がないと、制度変更を契機に転職者が増える可能性が高いため、事前にヒアリングするなどして、措置が必要な社員をリストアップしておきましょう。

おわりに

人事制度・階級の見直しは、社員の生活に直結する問題のため、企業としても慎重な判断が求められます。

見直しを行う際は、社内外から見て「妥当性のあるタイミング」を狙い、少しずつ進めていくようにしましょう。

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