中小企業の売上や業績を伸ばすために大切な3つのこととは
中小企業の存続にかかわるファクターとして、売上・業績があげられます。売上が増えれば利益が得られますし、業績を伸ばせば対外的な信用度を高められます。
売上も業績も、正しい努力によって向上させることができますが、努力の方向性を誤ると時間と労力の無駄になってしまいます。
この記事では、中小企業の売上・業績を伸ばすために必要な要素を、3つのカテゴリに分けてご紹介します。
売上拡大に向けた方針を自社で固める
企業の売上を拡大したい場合、どうやって売上を拡大するのか、企業として方針を固めることが大切です。具体的には、以下の観点から方針を固めていくのが基本戦略となるでしょう。
競争力を強化する
自社の商品・サービスを顧客に届けるためには、ライバル社と比較した際に、顧客の購入先候補として自社がトップに位置していることが理想です。
そのためには、自社の競争力を強化する施策を講じることが必要です。
競争力を強化するにあたり必要なのは、ライバル社の情報や、自社の主戦場におけるシェア等の分析です。例えば、ライバル社が自社よりも安い値段で似たような商品を提供しているのであれば、価格を見直すか・質をアピールするか検討する必要があるでしょう。
また、事業所を展開している地域の成績を見比べて、去年以前よりも売上が落ちているところとそうでないところ、あるいは伸びているところを比較していきます。
売上が落ちている地域が合った場合、その地域で過去にどのような出来事があったのか、同業他社の進出が著しい地域となっているのかなど、詳しく調べます。
その上で、自社が勝負できる要素が見えてきたら、今度は商品・サービスの見直しをかけ、ニーズに合致する形で販売戦略を立てます。
注意点として、コストダウンで勝負するのであれば、他社には真似できないレベルの価格帯で利益が出せるかどうか、入念に検討することが大切です。
顧客との触れ合いを増やす
長期的に自社の商品・サービスに興味を持ってもらうのであれば、顧客との触れ合いを増やす方向で検討する方法もあります。
企業のニーズよりも顧客のニーズを優先させるビジネスの考え方は「顧客志向」と呼ばれますが、徹底して顧客志向を貫くことができれば、顧客が自社から離れる確率は大幅に低くなるでしょう。
新規顧客の獲得は、既存顧客の維持よりも、およそ6~7倍のコストがかかるといわれています。そのため、リピーターを大切にすることが、自社の経営を支える上で重要なポイントになってきます。
具体的な施策としては、営業・販売担当者の共感力を鍛えるメソッドを採用した研修を開催したり、顧客からのフィードバックを頻繁に収集する仕組みを構築したりする方法があげられます。
SNSや専用アプリの導入など、顧客がスピーディーにフィードバックできる仕組みを準備することで、顧客の意識を自社に継続して向けやすくなります。
クレームも含め、顧客の意見を迅速に吸い上げていると、同業他社が想定していなかった・これまで打ったことのなかった手を思い付く可能性もあります。
アメリカ最大のアウトドア用品販売店REIでは、2015年、アメリカで1年でもっとも忙しいと言われるブラックフライデーに、全店舗を休業するという取り組みを行いました。それは「もっとアウトドアで過ごそう」という社会への呼びかけが理由です。
一見、顧客のニーズから離れた施策のように思えますが、結果的にこのアイデアは多くの会員と収益を生み出しました。顧客のことを大切にする取り組みが、顧客に評価された好例と言えます。
顧客満足度の向上に努める
商品・サービスの競争力を高め、顧客目線に立って営業・販売活動を行ったら、次は顧客満足度の向上を意識します。顧客満足度を向上させるためには、残念ながら奇抜な手を打つだけでは不十分です。
顧客が喜び、継続して自社の商品・サービスを利用してくれるためには、ある「普遍的な取り組み」が必要です。それは、いつも顧客のことを気にかけていると、しっかりアピールすることです。
例えば、自社が自動車販売・修理業を営んでいるなら、顧客の車検時期・法定点検時期などに合わせて連絡を入れるだけでも、顧客は「近々点検を入れないといけない」と気付いて、自社を利用してくれる可能性が高まります。
一度きりの関係で終わらず、継続して関係を保つためには、地道な努力がモノを言うのです。
業績を伸ばすための視点を持つ
業績を伸ばす上で重要なのは、一過性の売上向上策に依存せず、継続して利益をあげられる体制を構築することです。
成長を続ける土台作りのためには、以下の3点に注目して対策を講じることが大切です。
自社の強みを知って活かす
継続して利益を出し続けるためには、自社にどのような強みがあるのか、社内・社外それぞれの視点からチェックを入れる必要があります。
社内の視点からは、ブレーンストーミングを行ったり、マインドマップなどのツールを用いたりして、自社の特徴の洗い出しを行うのが有効です。
具体的には、以下のようにいくつか項目を絞り、その項目について自由に特徴を書き出していくのがよいでしょう。
- 事業内容
- 歴史
- 組織(体制)
- 社員(能力、特徴など)
- 立地
- 顧客(種類、特徴など)
- 社会活動(SDGsの観点から貢献できる要素など)
次に、信頼できる取引先に絞って、アンケートを取ったり聞き込みを行ったりします。
自社と取引を続ける理由や、自社を選ぶメリットについて、教えてもらった情報をまとめます。
社内・社外それぞれから得た情報をもとに、自社の特徴を洗い出したら、次はそれを競合他社と比較してみます。競合他社が実現できない要素があれば、その点を伸ばしていくことが付加価値になり、今後に活かせる自社の強みとなります。
業界・社内のルールを疑ってみる
世間一般の常識も含め、業界・社内でまかり通っているルールというものは、実は疑ってかかるべきものかもしれません。数学や歴史と違って、ビジネスの正答は1通りだけとは限らず、自社の置かれた状況に応じて答えが変わることも珍しくありません。
市場が縮小するなら、伸びる市場へとシフトしなければならないのでしょうか?良い商品をより多くの人に手に取ってもらうには、値段を安くするのが効果的なのでしょうか?
これらの問いに対する答えは、時代背景や市場の変化のスピード等によって、いかようにも変わってきます。問いに対する一般的な答えというものは、必ずしも自社の状況に当てはまるわけではないのです。
先の問いに対する模範解答を述べるならば、
- 伸びる市場で戦おうとすると消耗するので、自分たちの強みを発揮できる市場で戦うことが正解
- 良い商品の価値を分かってもらうためには、商品価値を正しく伝えなければならないので、価格は上げても販促を強化すべき
このような回答になります。
しかし、市場や主戦場の状況によっては、上記の回答が絶対とも言い切れないことを覚えておきましょう。
ターゲットを絞る
一見、ターゲットを絞ると聞くと、顧客数が減少してしまうのではないかと危惧する人は多いと思います。しかし、価値観の多様化が進む時代において、万人受けを狙った商品は、残念ながら魅力がありません。
分かりやすい例として、ラーメン店の傾向について考えてみましょう。
これまで、一般的なラーメン店では、味噌・醤油・塩の3味をベースにしたメニューが多く見られました。しかし、最近では個性を強烈に出した店が増えてきており、いわゆる「二郎系」・「家系」などの新しいジャンルも登場しています。
醤油専門、味噌専門といった形で、あえて味を絞り特徴を出しているところもあります。
これらの店は、分かりやすく醤油好き・味噌好きにターゲットを絞っていることが分かります。
そのような中、一般的なラインナップを揃えていても、特徴や個性が感じられず、結局のところ顧客はそれぞれが好きな味を探して店を探すことになります。
これと同じようなことが、多くの市場で起こっています。
だからこそ、企業は自社を利用してくれる顧客の傾向を正しく把握し、それぞれの嗜好に合わせて商品・サービスをカスタマイズする必要があります。ターゲットを絞り、ノウハウを蓄積することが、逆に安定して業績を伸ばすことにつながるのです。
他社にはない「独自性」を磨く
売上・業績向上を目指すにあたり、他社に真似できない要素を備えることは重要です。独自性を磨くことで、顧客は自社で商品・サービスを購入する根拠が明確になるため、企業には以下の観点から自社の現状を改善していく努力が求められます。
複数の専門性をかけ合わせる
専門性は、よくかけ算で考えて運用すべきだと言われます。
異なる専門性・複数の専門性をかけ合わせることで、唯一無二の存在になれる、という意味です。
仮に、1つの分野で一流レベルになれたとしても、その分野のニーズがなくなってしまったら、その後の挽回が難しいからです。自社独自の試みがある程度許される環境であれば、企業は複数の専門性をかけ合わせた事業運営を検討した方がよいでしょう。
例えば、アウトドア事業のかたわら、レンタカー事業も行っているなら、それらをかけ合わせたプランができないか考えてみます。
車中泊プランのような形で、車両の長期レンタルを行うプランを始めて、オプションで車中泊グッズ・キャンプグッズも貸し出すサービスを始めれば、これまでは想定してなかったユーザー層が興味を持ってくれるかもしれません。
社員の個性・責任感を育てる
中小企業にとって、社員の個性は将来の財産となる可能性を秘めています。
個人の持ち味が発揮できている組織は、社員の働く喜びを創造する上で、よい影響を与えることが期待できるからです。
社員の個性を尊重するということは、社員が「これが私の個性です」と主張した内容を受け入れることではなく、むしろ「他の社員から評価された個性」を仕事に活かせる土壌が社内にあることを意味します。
職場のメンバーが、お互いにそれぞれの良いところを理解していると、作業効率も上がりますし、やりがいのある仕事ができます。
同時に「この仕事は自分にしかできない」・「これを任されたのは自分だけだ」という意識が高まり、社員の仕事に対する責任感も生まれます。
経営者としては、社員同士の前向きなコミュニケーションを促せるよう、雑談も含めて気軽にミーティングができる仕組みを構築したいところです。
ブランディングに注力する
自社の取り組みを顧客にアピールして、他社との差別化を図る際には、ブランディングが有効です。自社の商品・サービスが、顧客の心に留まるようになれば、自社はその顧客のライフスタイルを支える存在になることができます。
ブランディングとは、特定の商品ではなく、自社の商品・サービスに込められた「価値観」を伝える行為です。顧客にとって「代わりのいない」存在になれると、企業は以下のようなメリットを享受できます。
- リピート率の向上
- 知名度の向上
- 販路拡大
- 高単価が維持できる
- 採用力の強化
- 社員の意識向上
- 広告宣伝費の削減 など
実際にブランディングを進める際は、まず社内でブランドイメージを明確にしてから、情報発信に取り掛かります。インターネットを介した発信が気軽に行える現代では、オウンドメディア・SNS等を活用してブランディングを試みるケースが多く見られます。
おわりに
中小企業が売上・業績を伸ばすためには、競争力や顧客目線を鍛えるだけでなく、ターゲットを絞るなどの戦略が求められます。また、自社にしかないもの・自社の価値観にあたるものを、顧客にしっかりと伝えていくことも重要です。
社長としては、既存のスタンスを崩すことにより、社内の連携が崩れるのが恐ろしいと感じる場面もあるかもしれません。
しかし、真摯にやるべきことに取り組んでいれば、長い目で見て確実に成果は現れるはずです。