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決算書から読み解く会社の健康状態のポイントと企業診断とは

(決算書から読み解く)

人間の身体と同じように、会社の健康状態を読み解く場合、決算書の情報が有効活用できます。ただ、そのまま決算書を読むだけでは分からないことも多いため、情報を少し加工して、診断に必要な数字を算出する必要があります。

より細かく会社の状態を知りたい場合は、経営コンサルタント等に企業診断を依頼する方法もあります。この記事では、決算書から会社の健康状態を把握する方法や、企業診断について解説します。

決算書の情報から会社の健康状態を把握するには

(決算書)

自社の決算書から会社の健康状態を把握するためには、5つのポイントに注目する必要があります。以下、それぞれのポイントについて、チェック方法や重要性などについてご紹介します。

粗利をチェックする

粗利とは、売上から仕入分を差し引いた金額のことです。
会社がどのくらい稼いでいるのか、かんたんに把握できる指標の一つであり、経理に詳しくない経営者にとっても粗利は重要なポイントです。

粗利が売上に対してどのくらいの割合かを計算したものが「粗利率」で、業種によって以下のような傾向が見られます。

  • サービス業など付加価値の高い業種は粗利率が高め
  • 大量の商品を取引できる業種は粗利率が低め

これらの傾向は、単純にどちらが良くてどちらが悪いという話ではありません。
粗利率は、同業他社と比較したり、前年以前の自社の粗利率と比較したりして、業績を判断するための指標だからです。

粗利率の推移が思わしくないようであれば、売上単価を上げるか、仕入単価を下げるか、大まかに2通りの方法があります。

どちらを選ぶかは企業の戦略次第ですが、売上と仕入の関係に特化して計算できる点において、粗利率は使い勝手の良い指標と言えるでしょう。

人件費をチェックする

人件費の観点から決算書を読み解く場合、先ほど算出した粗利益が役に立ちます。
【人件費÷粗利益】の公式で、稼いだ粗利益の中から社員に還元された指標を確認できます。

この指標は「労働分配率」といい、粗利益に占める人件費の割合を計算するために用います。
労働分配率が高いほど、人件費が経営の余裕を奪っていると言えます。

ちなみに、中小企業の目安としては、6~7割が一般的とされます。
ただ、業種によって労働分配率の目安は異なりますし、単純に人件費を減らせば解決する問題でもありません。

労働分配率は、組織の成長と比較しながら検討すべき指標です。
現在支払っている賃金を下げるのではなく、労働生産性を向上させて粗利益を増やす方向性で、対策を講じることが大切です。

借金と返済スパンについてチェックする

企業がスピード感を持って成長するためには、借金も選択肢の中に含めつつ、効率的な成長を促すことも必要になるでしょう。しかし、無計画に借金を重ねても、企業経営を圧迫するだけです。

そこで、企業が「まだどのくらい借り入れができるのか」を示した指標が、借入返済可能変数(債務償還年数)です。

公式は【借入金÷(利益+減価償却費-法人税等)】で、かんたんに言うと「返さなければならないお金」を「稼いだ利益」で返済した場合に、あと何年で返済できるのかを計算するものです。

借入金の大小、または稼いだ利益によって、借金を返済する期間の長短が変わります。一般的には10年程度が目安と言われ、それ以上長くなるようなら、返済金額の変更・見直しを検討した方がよいでしょう。

資金繰りをチェックする

支払わなければならないタイミングで、お金が用意できないという状況は、経営者にとって死活問題です。よって、資金繰りはシビアに判断しなければならないため、可能であれば決算書の情報からも資金繰りが健全かどうか把握しておきたいところです。

その際に役立つのが「流動比率」という指標で、貸借対照表の以下の資産・負債を比較することで算出します。

  • 資産:現金、売掛金、商品などの流動資産(比較的早くお金になるもの)
  • 負債:買掛金、未払金などの流動負債(すぐに支払わなければならないもの)

流動資産が流動負債に比べて上回っていればよいのですが、ギリギリの状態は問題であり、数値に余裕があることが望ましいです。具体的には、流動資産が流動負債の1.5~2倍(150~200%)であれば、健全と判断してよいレベルです。

自己資本についてチェックする

一口に資産と言っても、例えば貸借対照表の現金の中には、借入金も含まれている場合が考えられます。つまり、決算書上の資産の中には、企業が負債を背負うことで得たものもあるわけです。

会社が自力で稼いだ・貯めたお金が潤沢であれば、それだけ経営も安心です。その「自力で稼いだ・貯めたお金がどのくらいあるのか」を示す指針が、自己資本比率です。

具体的には、貸借対照表における「資産の部合計(総資産)」の中に「純資産の部合計
(自己資本)」がどのくらい含まれているのかを、以下の公式で算出します。

【自己資本比率=自己資本(純資産)÷総資産(他人資本+自己資本)×100(%)】

自己資本比率を引き上げるためには、以下の2つのアプローチを取ります。

  • 自己資本を増やす
  • 総資産を減らす

なお、自己資本比率の目標値は、概ね30%以上です。

プロの目による企業診断を受けてみる

プロの目による企業診断

お伝えしてきた通り、決算書の情報から算出する指標だけでも、ある程度の情報は読み解くことができます。しかし、経営戦略を再検討するなど、より具体的な行動を起こす上では、経営コンサルタント等のプロの目による企業診断を受けることが効果的です。

企業診断を行う際は、経営陣に寄り添いながら、経営コンサルタントが対策を講じていきます。
今回は、決算書をベースにした、企業診断における分析の流れについてご紹介します。

損益分岐点分析

損益分析点分析とは、利益計画を立てる上で重要な分析手法で、各事業が投資・コストを回収できるかどうかをチェックするためのものです。

分析は、まず費用を「固定費」と「変動費」に分けることから始まります。

固定費とは、売上とは関係なく計上しなければならない経費のことです。
これに対して変動費とは、売上に応じて金額が変動する経費が該当します。

損益分岐点となる売上高を算出する際は、固定費に変動費を上乗せし、それを上回る売上高を計算します。費用と売上は、分析時は曲線によって示され、それぞれの交点が損益分岐点となります。

このように説明すると分かりにくいと思いますが、例えば以下のような形で考えると、イメージしやすいかもしれません。

〈具体例〉

  • 商品仕入額:1個100円
  • 商品売上額:1個150円
  • 固定費  :40万円

上記の条件における損益分岐点売上高は、

150円-100円=50円(1個あたりの利益)
400,000円÷50円=8,000個(固定費を回収するための販売個数)
150円×8,000個=1,200,000円(売上ベースで考えた際の固定費回収額:損益分岐点売上高)

上記の通り計算できます。

損益分岐点分析を行うことにより、自社の事業における問題点を可視化できます。
特に、複数の事業を展開している場合は、採算性を検討するのにも役立ちます。

財務分析

プロの目による財務分析は、大きく以下の3つの視点から行われます。

  • 収益性
  • 効率性
  • 安全性

収益性を把握する場合、先にご紹介した粗利率も含め、売上に対して利益がいくら出ているのか割合を算出します。
当然ながら、収益が出ていない事業・売上に対してコストが高い事業に関しては、将来的に見直しをかけることになるでしょう。

効率性を把握する場合、財務諸表全体を見通して、いびつな部分を割り出していきます。
一見きちんと利益が出ている事業・店舗であっても、他の事業・店舗と比較して余分に経営資源が投入されていることが分かれば、資源をより効率的な方向へと分配する必要があります。

最後に安全性ですが、こちらは主に資金繰りの観点から分析します。
先にご紹介した流動比率や自己資本比率などの指標を算出し、バランスをチェックしていきます。

もちろん、安全性を確保したいからといって、大量の現金を保有するような状況だと、事業投資を控え過ぎているという評価になります。プロがチェックを入れる場合、適切な投資が行われているかどうかも含め、事業発展の方向性を考えます。

その他の分析

財務分析以外にも、企業診断では様々な観点から分析を行います。
以下、主な分析内容について、かんたんにご紹介します。

組織分析

会社は人によって構成されている組織ですから、組織内の状況が思わしくなければ、それは数字にも影響をもたらします。

例えば、以下のポイントから社員が成果を出せているかどうかをチェックすることで、組織としてスムーズな動きができているかどうかを判断します。

  • 経営者のリーダーシップは浸透しているか
  • 組織として生産性は十分か
  • 人的リソースの質は高いか
  • 社員一人ひとりの向上心、モチベーションは高いか

社員のパフォーマンスが高くても、それがビジョンにつながっていなければ、ただのリソースの無駄遣いになります。トップの意向が社内に行き届いているかどうかを把握する上で、組織分析は重要です。

事業リスク分析

どのような事業活動も、半永久的に継続できる保証はなく、いずれの事業も不確実性をはらんでいます。原材料の価格が上昇するかもしれませんし、自然災害により工場が甚大な被害をこうむるかもしれません。

こういった不確実性に備え、企業として対応策を講じていれば、その分だけ事業リスクは少なくなります。また、万一問題が発生した際に、どのくらいの損害が発生するのか事前に見積もっておき、企業負担を最小限にとどめる効果も期待できます。

おわりに

決算書から得られる情報を、適切な形で活用すると、将来の経営に役立つ情報を手に入れることができます。

しかし、決算書の情報だけでは、人間で言えば身長・体重・血圧といった基本的なパラメーターから分かる情報しか得られません。

より詳しい精密検査を企業経営に取り入れるのであれば、企業診断という形で、経営コンサルタント等のプロの視点を取り入れるのが近道です。

気が付いたら末期……といった事態におちいらないよう、早めに会社の健康状態を確認しましょう。

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