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中小企業の役員報酬の決め方とは?金額と方法によって節税効果も

中小企業の役員報酬の決め方

役員報酬は、節税を考えるにあたり真っ先に検討する節税方法の一つですが、税金に関する知識がないと金額設定を失敗してしまうリスクもあります。

そのため、役員報酬の金額をどう決めるべきか悩んでいる経営者の方は、実は意外と多かったりします。

ただ、役員報酬の金額を決めるにあたり、参考になる数字はいくつか存在しています。この記事では、中小企業における役員報酬の決め方について、節税効果が見込めるケースも含め解説します。

役員報酬の参考になる金額を知ろう

役員報酬の参考

一から役員報酬の金額を決めようとする場合、そもそも何を基準にして金額を設定すればよいのか、イメージが湧かないかもしれません。

そこで、まずは自社における役員報酬を決定する上で、参考になる金額についてご紹介します。

国税庁のデータから紐解く

国税庁がまとめている「民間給与実態統計調査」では、民間の事業所における年間の給与の実態が、給与階級や企業規模などの別に統計データとしてまとめられています。

民間給与の中には役員報酬も含まれ、第7表の「企業規模別及び給与階級別の給与所得者数・給与額(役員)」の欄をチェックすると、企業規模ごとの役員報酬が分かります。

すべての企業の事情に当てはまるわけではないため、自社が該当する企業規模のデータを一概に当てはめるわけにはいきませんが、最近の事情として「全国的にどのくらいの役員報酬が妥当なのか」を確認する上では役に立つ情報と言えるでしょう。

大まかな参考値として、令和2年度の調査における、資本金ごとの役員報酬の平均値をご紹介します。

    • 資本金2,000万円未満:569万円
    • 資本金2,000万円以上:796万円
    • 資本金5,000万円以上:980万円
    • 資本金1億円以上:1,175万円
    • 資本金10億円以上:1,203万円
  • ※(小数点以下は四捨五入)

※参照URL
https://www.nta.go.jp/publication/statistics/kokuzeicho/minkan2020/pdf/07.pdf【PDF】

単純に考えると、企業規模が大きくなるにつれて、役員報酬の額も大きくなっていることが見て取れます。また、実際に統計を見ると、役員報酬の額には男女差もあることから、誰が・どのような立場で役員報酬を受け取るのかによって、参考にする金額も変わってくるでしょう。

自社の業績や従業員の給与

役員報酬は、一度決めたら変更できないものではありませんから、毎年企業の事情に応じて自由に決められます。毎年同じ金額に設定する必要はないため、業績が好調であるならば、役員報酬の金額を増やすことを検討しても差し支えありません。

しかし、業績が落ち込んでいる状況の場合は、まず企業の維持を最優先にして、財務面で不安要素を抱えないような金額に調整すべきです。

また、当期の利益次第では税金が大幅に増えるおそれもあるため、事業年度途中に役員報酬を変更する場合は、税理士に相談しつつ正確な利益・税額を見込んで金額の変更を決定しましょう。

売上が落ち込んで従業員の給与が低くなったにもかかわらず、役員報酬の水準に変化がない状況が続くと、従業員は転職を検討する可能性があります。

そのため、社長がきちんと経営上の責任を果たすのはもちろんのこと、従業員との給与格差を20倍未満に抑えるなど、一般常識にもとづいた金額の設定が必要です。

同業他社の情報

中小企業の場合、同業他社がどのくらいの役員報酬となっているのかをチェックすることも、自社の報酬額を検討する上で重要です。取引先に対して直接ヒアリングする必要はなく、顧問税理士や金融機関等に相談すると、妥当な金額が見えてくるでしょう。

同業他社の情報に注目するもう一つの理由は、役員報酬を損金算入できる上限を知るためでもあります。同業他社と比較して極端に高い役員報酬を設定してしまうと、税務署に損金算入を認めてもらえない可能性がありますから、十分注意しましょう。

逆に、役員報酬を0円に抑えると、今度は経営上の問題があるのかと金融機関に疑われてしまうおそれがあります。役員報酬は、多すぎても少なすぎても、自社の印象に影響を及ぼしてしまうものと心得ましょう。

役員報酬の金額次第では「節税」が見込める

役員報酬 節税

役員報酬の金額を決定する際、特に注目すべき点は「どうすれば節税になるのか」についてです。役員報酬は、金額次第では企業の利益を圧縮するために用いることもできる一方で、所得税の対象にもなるため、役員報酬に関係する税金の種類を正しく理解することが大切です。

役員報酬の増減と関係がある税金の種類

一般的に、役員報酬が多ければ法人税は少なくなりますし、役員報酬が少なければ法人税は増加します。しかし、役員報酬が増えると所得税の負担が大きくなり、逆に少なければ負担は減ります。

このように、役員報酬と法人税・所得税の関係はトレードオフであり、どちらも安くすることはできません。よって、役員報酬は、会社の負担と役員個人の負担を天秤にかけて、最終的に個人・法人を合計した手取り額がもっとも多い報酬額を計算する必要があります。

実際に、自社の役員の役員報酬がいくらなら手取り額がもっとも多くなるのか計算する場合、法人利益と役員報酬を分けて、そこから法人税・所得税を計算します。

手取り額を最大化する考え方の一つとしては、法人税が基本的に一律であるのに対して、所得税は累進課税となっているため、法人の利益が増えるにつれて役員報酬を増やしていくのが基本戦略となります。

仮に、法人利益が1,000万円の場合で、法人税等の税率が30%の場合、役員報酬が0円だと300万円が税金として持っていかれる計算になります。しかし、法人利益700万円・役員報酬300万円とした場合、法人税等は約210万円です。

役員報酬からは所得税が差し引かれますが、基礎控除等の各種控除がありますから、実質的に5万円ほどにおさまるものと考えてよいでしょう。単純に法人税等・所得税の関係性だけを比較した場合、概算でも手取り額に85万円ほどの差が生じることになるわけです。

社会保険料・住民税についても忘れてはいけない

法人税と所得税の関係性についてイメージが湧くと、収入が増えたら役員報酬を増やせばよいと考えるかもしれません。しかし、役員報酬が所得税の対象ということは、社会保険料や住民税も役員報酬の中から差し引くことになります。

役員報酬が300万円なら、社会保険料はおよそ46万円です。
また、住民税額は概ね11万円ほどになります。
この金額を加えて、先の条件で比較してみましょう。

役員報酬ゼロの場合

・法人利益:1,000万円
・法人税等:▲300万円
【税引き後利益:700万円】

役員報酬300万円の場合

・法人利益 :700万円
・役員報酬 :300万円
・法人税等 :▲210万円
・所得税  :▲5万円
・社会保険料:▲46万円
・住民税  :▲11万円
【税引き後利益:728万円】

上記のケースでは、役員報酬があった方が税引き後利益は大きくなっていますが、ここから役員報酬を増やすと所得税も社会保険料も増えます。

すると、法人税がいくら安くなっても、結局、税引き後利益は少なくなってしまいますから、もっとも利益が残る配分を考えなければなりません。

役員報酬の額を決める際の注意点

役員報酬の額を決める際の注意点

役員報酬を増やしても、それだけでは節税にならないため、本気で節税のために役員報酬を決めようとするのであれば戦略を立てる必要があります。以下、主に節税という観点から、役員報酬の額を決める際の注意点についてお伝えします。

シミュレーションを行う

役員報酬の金額を決める際は、漠然と金額を設定するのではなく、税理士など専門家によるシミュレーションが有効です。

シミュレーションとは、当期の利益と役員報酬額に応じて、発生する税金と手取り額にどのくらいの差が生じるのか、あらかじめ表計算ソフト等で計算することをいいます。

Web上で条件を入力すれば、具体的な金額を算出してくれるフォームもあります。どのような方法を使っても構わないので、まずは一度現在の見込み利益でどのくらいの税金が発生するのか、大まかに金額を計算してみることをおすすめします。

本気で節税するなら配偶者・親族の協力も必要

これから役員報酬を決めるのであれば、配偶者の方・親族の方にも協力してもらい、節税を試みるのも有効です。一般的に、オーナ―社長が経営している中小企業では、奥さんが会社の役員になっているケースが多く見られます。

複数人で所得を分散すると、一人あたりの所得税や住民税・社会保険料が安くなります。よって、二人合わせての税額負担が軽減するため、配偶者を役員に据えることは節税においてメリットの大きい方法です。

同様に、親族も役員に加えた場合、節税効果がさらに高まります。日本国内における中小企業の同族経営は、安定した経営の維持だけでなく、節税の観点からも重要であることがうかがえます。

役員報酬以外の節税対策も知っておく

経営者の節税対策は、当然ながら役員報酬だけではなく、他にも様々な方法が知られています。

自宅から会社まで距離がある場合は、通勤手当を役員に支給する方法が考えられますし、役員の契約しているマンションを会社名義に変更して「役員社宅」扱いにする方法も、節税という観点からは有効です。

これまで節税には有効だと知っていても、自社で取り組んでいなかったことがあれば、できる範囲で取り入れてみましょう。

おわりに

役員報酬を決める場合、最終的に手元にお金をいくら残すのか・いくらまでだったら企業経営に影響を及ぼさないのかを考えた上で、適切な金額を算出する必要があります。

極端な話、役員報酬を0円として決算書の利益を増やす方法もありますが、それでは金融機関から不安視されてしまうかもしれません。

事前にシミュレーションを行い、自社にもっとも利益が残る金額を算出しておけば、基本的に役員報酬の金額で迷うことは少なくなります。

専門家の意見も取り入れながら、見込み利益に応じた金額を設定しましょう。

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