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引退しない会長と2代目社長の成功への嫉妬【経営物語】

こんにちは、ファーストステップのコンサルタントです。

ここまで社内の次世代幹部の育成の課題を抱えた会社についての事例をご紹介しましたが、今回は外部から優秀なNo.2を迎えたにも関わらず、短期的には会社の業績が伸びたかに思えたけど、結局は伸びなかった…という事例を2つ紹介したいと思います。

優秀な人を入れれば万事上手く行く?

残念ながら、実はそんな虫のいい話はないです。

事例を元に、外部から優秀な人材を迎える時の注意点や、何が失敗の元だったのか?どうすれば良かったのか?というポイントを確認していきたいと思います。

ヘッドハンティング会社から来たのは、凄腕女社長

高度な研究を行っていた研究者のKさんは、クラウドファンディングにより出資金が集まったため、会社を設立することにしました。

経営についてはプロに任せたい…との思いで、ヘッドハンティング会社に社長となるべく人の紹介を依頼。年収3000万円で経営に長けているとある女性を雇い入れることに。

Kさんは会長職に就き、実際の会社経営はすべて女社長に任せる代わりに、業績を伸ばすことを約束してもらい、晴れて契約締結となりました。

その後、女社長はすぐにその手腕を発揮し、約束通りどころか約束以上の働きを見せました。

売上を0から30億円にまで伸ばし、従業員数も200人を超え、Kさんの研究は見事に実用化され確かな収益を獲得していました。

社長は社内外からも高い評価を受けており、会社は上手く行っているかのように思えていました。

会長は、業績が伸びていることが面白くない?!

ところが、創業者である会長の顔は、にこりともしません。

それどころか、社長のやること成すことが面白くない。事あるごとに他の幹部を呼んでは、社長の悪口を言っていました。何が会長をイライラさせたのでしょうか?

そう、それは”嫉妬”です。

業績を伸ばすことを約束させて、社長に高い給料を払い、そしてその結果本当に業績が伸びている。なのに会長はちっとも面白くない。この状態に名前を付けるなら、”嫉妬”としか言いようがありません。

研究者である自分には経営は向かないからと、人に任せたはずなのに。そして、それが実際に業績の面ではとても上手くいっているにも関わらず、「あの人を雇ったのは失敗だった…」と口にするのです。

なぜ業績が伸びていても、会長は嬉しくないのか?

社長のやり方にはたった1つ、でもとても大きなミスがありました。

それは、会長をないがしろにしてしまった…ということです。

社長本人に悪気はないにしろ、もっと会長を尊重する必要がありました。

  • この会社は研究者であるKあっての会社であること
  • Kの考える理念や事業に懸ける想いなどを、社長が主導しながら社員に浸透させていくこと
  • 社長主導の戦略であっても、事前に会長と打ち合わせをして、話を通しておくなど配慮をする

これらができていれば、会長が誰からも敬われず、孤立するという悪い状態を未然に防ぐことができたはずです。

No.2にすべて勝手にやられては、たとえそれが業績の面ではパーフェクトの働きであったとしても、トップはそれを良しとしないのです。これは、とても重要なポイントです。

社員や部下は皆、「誰かに認められたい…」という気持ちがあります…という話を常々してきましたが、実はこれは社長や会長など、トップの人でも同じです。

だから、会社の上位者同士がお互いを認めたり、褒めたり、心を通わせて一体となって働くことができずにいると、せっかく伸びかけた会社でも、うまくいかず伸びなくなってしまうのです。

この会社の場合は、結局女社長には慰労金を支払うことで退任していただきました。次の社長様とは、うまく連携を取っていけたらいいな…と思います。

M&A後のゴタゴタによる成長スピードの鈍化

社長・経営者が1人で悩まないための孤独解消法

もう一つ事例を紹介します。

会社規模は小さいながらも高い技術力で特許も取得しているY株式会社は、成長産業への積極的な投資で有名な大手上場企業にM&Aをされました。

当時売上6億円だったY社に提示された買取価格は、なんと30億円。今後の成長を見込んでとのことで、創業社長もこの価格には大満足。2つ返事で社長の座を明け渡し、会長職となることにしました。

さて、M&A後の事業運営はと言いますと、慶応出身で商社ルートにも強い、大変優秀な人物2名が、社長と副社長の座に派遣されてきました。

創業者だった社長は会長になり、名目上は社長副社長がNo.2、No.3の座。ですが、実際の経営はこの2人が行い、会長はほぼノータッチ。

さて、どんなことが起こったと思いますか?

会長の不満は募り、ついに勝負に打って出ることに。

やはり、前述した企業を同じような問題が勃発しました。「会社は儲かっているけど、会長は面白くない」と。

さらに悪いことには、社長、副社長はこの会社はさらに伸びるぞと踏んで、自分たちの手でMBO(マネジメントバイアウト)を仕掛けようと動き出したのです。支援者を募って資金を集めようとしていた矢先…

「会社が、あの憎き社長・副社長に乗っ取られる!このままではいかん…」

と、なんとそのタイミングで会長が会社を買い戻したのです。

ちょうど買収元である大手企業の本業の方の業況が傾いていたこともあり、買い戻しは無事成立しました。

その後、トラブルは法廷に持ち込まれ…

買い戻しにより社長に返り咲いた創業者は、経営権を取り戻しただけでなく、No.2、No.3だった2人を解任

自分たちが会社をここまで大きくして利益を上げたのに、用済みになったから切り捨てるなんてありえない、と元社長・元副社長の両名は激怒。結局、法廷の場で争われることとなり、裁判は今も継続中です。

せっかく会社は成長の一途をたどっていたのにも関わらず、トップとNo.2、No.3がうまくいかなかったために、成長スピードは鈍化し、裁判によりお互いが身を削りあうことに…。

「M&Aは難しい」という言い方をする人がよくいますが、私からすると、結局どんな局面においても「人と人って難しい…」これに尽きるんじゃないかなと思います。

秀でた人がいれば、それを叩きたい人が出る。嫉妬心や、自分だってやればできるんだという張り合う気持ち。

適材適所という言葉の通り、経営は経営の専門家に任せる…ということが上手くできれば、自分は製造や研究開発など、得意を活かした分野に注力できます。

でも、実際は経営が上手くいっていることに素直に感謝できなかったり、嫉妬してしまったり。

「会長より社長の方が、よく分かってるよね…」という社内の評価に苦しんだり。

ですから自分のプライドとの付き合い方も上手くコントロールしなければなりませんし、反対に、自分が分からないことは会長が社長に、社長が副社長に…というように、下の役職の方に対して質問したり、相談したり。下の人から学ぶということがあってよいのではないでしょうか。

今回2つの事例により、トップの嫉妬によりNo.2との関係が悪化し、上手く行きかけていた事業の成長が止まってしまうという残念なケースを見てきました。

今日もお付き合い有難うございました。

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