幹部社員や右腕が育たない3つの問題点と育成ポイント
こんにちは、ファーストステップのコンサルタントです。
今まで事例記事を通して”幹部社員”や”社長の右腕”と言われるような人材を育てることの難しさをみてきました。
社長がよく口にする不満で多いのが、「いつも自分ばかりが忙しくて、下に重要な任務を任せられない…」です。
現場でトラブルがあれば、いついかなる時も社長がすぐ飛んでいかなければならない…という状態は、社長にとってストレス以外の何物でもありません。
「もう少し自分1人で考えて動ける幹部が居たら…」と思う反面、「この仕事を彼に任せるのは心配だ…」という思いもあり、問題の根底には社長自身が自分の仕事を手放せないということもあります。
今日は、幹部育成をする上で頻出する問題点をまとめていきたいと思います。
問題点1 コミュニケーションが取れていない
やってほしいと「思う」だけでは伝わりません。
幹部と上手くコミュニケーションを取ることができていますか?
副社長や幹部役員などが、もっと自分の代わりとして機能してくれたらいいのに…そう思っている社長様も多いのではないでしょうか。
では、その思いを口にしていますか?例えば、「あなたは社内でNo.2なのだから、必要な時は私の代わりに経営判断を下してほしい」という思いをきちんと表明しているでしょうか。
思いを表明するといっても、それが単なるお説教やプレッシャーになっていないか注意が必要です。
No.2の人物に期待を寄せるあまり厳しい口調で叱責してしまったり、何でできないんだと詰めたり…そんな社長のお気持ちも、もちろん分かります。ですが、それでは心が離れてしまいます。
以前ご紹介した事例のパワハラ専務と社長のようにコミュニケーションがきちんと取れていないと、思うような働きはしてもらえません。
問題点2 信頼関係が築けていない
以前ご紹介事例で、元教え子であるNo.2を「まだひよっこだ」と社長が軽んじていたために信頼関係が築けていませんでした。
任せていない、権限のない仕事をやれと言われても、それは無理な話。
No.2として機能させるためには、あなたはNo.2なんですよ、ということを本人に伝え、正当に評価し頼りにしていることを表さなければなりません。
また、要求と報酬は常に最適なバランスがないといけません。
つまり、その人に高いパフォーマンスを要求するためには、それ相応の高い評価と報酬を与える必要があるということです。
役割に見合った評価と報酬を用意しているか?
No.2である人物を、あなたはきちんと評価しているでしょうか?
「この人は見込みがある」と社長が思っていても、それが人事考課やお給料に反映されていなければ、社長がその人を高く評価しているということを本人も周囲も知ることはできません。
また、今までよりも高度な役割を求める以上、責任やリスクも付きまとうでしょう。精神的なストレスや残業など、拘束されることも増えるでしょう。
それなのに何も得られるものがなかったとしたら…社長に従う気持ちが沸いてこないことは容易に想像できます。
見合う評価や報酬を得て初めて、期待する働きが得られます。
そして、昇格や昇給というのが何よりも分かりやすい社長から本人への信頼や感謝を表す方法になります。
「期待しているよ」とか、「君は優秀だ」とかいう言葉だけではあまり効果が発揮できません。誰にでも言っているかもしれませんし、特にメリットもありません。
調子の良いことを言って、タダ働きさせるつもりだな…と感じる人もいるかもしれません。また、言葉だけでは周囲の人に社長が自分を評価しているということを分からせることもできません。
目標数字を達成した時、頑張っているなと感じた時、会食やプレゼントでねぎらうなどちょっとした”心遣い”をするのも有効です。
ちょっと厳しいことを言うようですが、口先だけで言ってはダメ。
身銭を切って、「いい働きをしてくれてありがとう」と社長自ら伝えるということは、コミュニケーションを取り、信頼関係を構築していく上で大切なことです。
問題点3 任せきれていない
先日ご紹介した事例では、トップの嫉妬によりNo.2に上手く仕事を任せきれなかったり、関係にヒビが入ってしまった例を紹介しました。
人間関係というのはなかなか難しいもので、人を見てしっかりと正当な評価を付けようと思っても、好き嫌いなどの主観が入ってしまうことがあります。また、営業だけでなく管理部門など、成果が見えにくい部門もありますよね。
誰にどんな権限を委譲して、どんな役割を期待するのか。そして、それが出来たらどれだけの報酬があるのか?
ルールが明確でないと、結局は任せたことにならず、社長がすべてをやらなければならない…という事態から抜け出せません。
社員の中からNo.2を擁立する場合でも、外部から連れてくる場合でも、M&Aや株主・親会社の意向などによる意に反したNo.2の派遣だとしても、根本的には同じ。
きちんとコミュニケーションを取って意思疎通を図り、お互いを敬いながら明確な役割分担をして、見合った評価、報酬を与える…この一見当たり前に見える流れを組むことが、なかなか感情面で折り合いがつかず上手く行かないというケースが多いようです。
仕組みづくりをしよう
管理会計や人事制度などを整えることで、経営状況の把握や正当な評価に繋げることができます。
「どの部門が儲かっていて、どの部門は赤字なのか?」…部門別の採算を見ることで、経営基盤の確認を行い、今後の経営戦略を立てることができます。
また、「今の方向性があっているのか?修正が必要なのか?」ということを都度知る重要な指標になります。そして、見合う評価・報酬を与えることで社員の不平等感や不満を防ぎます。
管理会計の導入は、数字の管理が必要になるため、社員にとって締め付けがあるように感じる人もいるかもしれません。
しかし、実際には正当な評価が得られるので、社員を守ることにも繋がります。
頑張っているのに報われない…と反抗的だったNo.2も、自らの成績を顧みる機会ができるので、最初は抵抗されても最後には「会社の成長のためにも、自分のためにも管理会計を導入してよかった」と言われるので、心配はいりません。
今の経営状況がぼやっとした状態でしか把握できていないために、戦略が打ち出せずにいませんか?
人を育てるためには、その素地を作ることが大切です。
管理会計の導入と人事制度の構築は、見えにくかったものを明らかにしてくれる良い機会となるでしょう。
No.2には何事も包み隠さず、伝える
自分の右腕となる人物に対しては、全面的な協力を仰ぐ必要があります。
ですから、会社や社長自身にとって不都合なことを隠すべきではありません。
たとえば、社長が懇意にしてきた取引先と、支払い関係でトラブルになった時。「社長の判断が甘かったせいじゃないか」と責められるのがイヤで誤魔化したり。金策に悩んでいた時に、会社に内緒で知人から簿外で借金したのを、そのままにしていたり。
隠し事をすると、バレた時にいっきに信用を失います。
社長は大事なことは何も教えてくれない…とへそを曲げてしまうかもしれません。やはり自分は信用されていないんだ…と思うかもしれません。
社長の右腕としてその幹部を機能させるためには、右腕として扱うことが必要です。つまり、頭は一つ。社長と右腕は一心同体。
何事も包み隠さず話し、心を通わせ、一緒になって会社を良くしていこうという姿勢が大切です。
まとめ:どう扱われたらやる気になるか考えてみる
管理会計についてなど、少々難しい話もしてしまいましたが、社長の右腕を育てたいと思った時、むやみに怒ったり厳しく指導しても意味がないことが分かっていただけたでしょうか。
ポイントは、「もし自分が彼だったら、どう扱われたらよく働きたくなるのか?」と想像してみることです。
会社の内情を包み隠さず伝え、「あなただから」と、信頼と期待を寄せて重要な仕事を任せる。そして、達成できた時にはしっかりとその成果に報いる。感謝をする。
この繰り返しをすることで、No.2はあなたの最高のパートナーとして育っていきます。そして、副社長が社長より優秀になってしまったらどうしよう…と不安になったり、嫉妬をしそうになる時があったら思い返してください。彼を育てたのは、他でもない自分だということを。
良い経営者とは?というのは永遠のテーマであると感じています。
ですが、少しでも理想に近づくために、まずは腹を割って幹部と話をしてみてください。きっと今日から何かが変わっていくと思います。